仕事とエネルギーについて完全解説します!【高校物理】

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物理

この記事では、仕事とエネルギーについて解説する。
特に物理の成績が良い人の中でも、「位置エネルギーは$mgh$」なんて間違った暗記をしていたり、仕事や位置エネルギーについては「説明できないけれど問題は解ける」という人が多くいるため、仕事やエネルギーが何を表しているのかをしっかりと理解している必要がある。

特に応用問題になった際、これらのような単なる暗記では歯が立たなくなることが多いので注意が必要である。
そこでこの記事では次の事柄を目標としている。

①仕事とは何かを正しく理解する。
②エネルギーとは何かを正しく理解する。
③「位置エネルギー」についての誤解を解く。

01物理における仕事とは

仕事の定義

物体が力を受けて移動したとき、その物体は力から「仕事を受けた」といい、同時に力は物体に対して「仕事をした」という。

つまり仕事とは、移動距離によって力の物体に対する影響力を測るための量であるといえる。

移動距離が長ければその力の物体に対する影響力は大きくなるし、力そのものが大きくても影響力は大きくなるであろう。

つまり、以下の式のように移動距離と力の大きさそれぞれに比例した量として仕事を定義する。この時の単位は[N×m]=[J] (ジュール)という単位を用いる。

$$W=F\Delta x$$

ただし、力はあくまでも移動に関与した力、すなわち移動した方向と平行な力の成分のみを用いて計算することに注意する。

例えば、物体に対して斜めに力をかけて物体を横向きに移動させたとき、力がした仕事はその水平成分のみを考えれば良いから、
$$W=F\Delta x \cos \theta$$
となる。

仕事の定義:$W=F\Delta x$
(ただしFとxは同じ向き)



仕事の原理

物体に対して与える仕事は、同じ場所に移動させるのであればロープや滑車、シーソーなどの道具や機械を使っても変わらない。これを仕事の原理という。

仕事の性質

仕事は次のような性質を持つので注意が必要である。

①仕事はスカラー量である(ベクトルではない)

仕事はベクトル量でなくスカラーであるため、向きの情報は持たない。

②仕事は負の値を取りうる

物体が力によって力の向きに移動したとき、力は正の仕事をする。
しかし力をかけたほうとは逆向きに動いたらどうであろうか?
それはもはや力をかけることによって物体の移動を邪魔しているということになる。
このような場合その力の仕事は負になり、このような仕事を負の仕事という。

後に解説するが、仕事は運動エネルギーの変化量であるという事実を知っていれば、
正の仕事は運動エネルギーを増加させる仕事、負の仕事は運動エネルギーを減少させる仕事という見方の方が理解しやすいかもしれない。

③力に対して物体が垂直に動くとき、その力は仕事をしない($W=0$)

これは非常に簡単な話である。
仕事とは力によって物体を移動させたときにのみ発生するから、物体が移動していないならたとえ力をかけていたとしても仕事は0である。
すなわち、以下のように移動方向と垂直な力は仕事をしない。

アニメーション

仕事率

仕事の効率を知るためには仕事をする速度を考えれば良い。
すなわち、単位時間当たりの仕事量を仕事率として定義する。この時の単位は[J/s]=[W] (ワット)という単位を用いる。

$$仕事率:P=\frac{W}{t}$$

また、これは平均の速度$v=\frac{x}{t}$を用いれば、

$$P=\frac{W}{t}$$

$$=\frac{Fx}{t}$$

$$=Fv$$

となる。
つまり、一定の力が働く場合はその力に平均の速度をかけた値が仕事率に等しい。

仕事率:$P=\frac{W}{t}=Fv$



02エネルギー

エネルギーと運動エネルギー

物体が持っている、仕事をしうる能力のことをエネルギーという。

例えば、速度を持って運動している物体は他の物体にぶつかることでその物体を動かすことができるし、糸をつければ静止している他の物体を動かすこともできる。

従って、速度を持って運動している物体にはエネルギーがあるといえる。

このようなエネルギーを運動エネルギーといい、物体の質量$m$および速度$v$を用いて、次のように表現できることがわかっている。

$$K=\frac{1}{2}mv^2$$

運動エネルギーと仕事

運動エネルギーと仕事には次の関係がある

(運動エネルギーの変化量)=(物体が外部から受けた仕事)

これを、$K_1$を始めの運動エネルギー、$K_2$を終わりの運動エネルギーとして式で表すと、

$$K_2-K_1=W$$

と表せる。
この式を変形すると、

$$K_1+W=K_2$$
となり、仕事は運動エネルギーを増加や減少させる要因であるという見方もできる。

この式の詳細な導出は以下のページで行っている。(難易度は少し高いので初学者は飛ばしても良い)

【微積物理】運動エネルギーと仕事の関係を導く
授業などではよく暗記しろと言われて突然出てくる「運動エネルギーと仕事の関係式」。 なぜ運動エネルギーはmv²/2なのか説明できますか?実際に一度導出方法を理解することによってより深い理解を得ましょう。

 

ここでは少々厳密性には欠けるが、加える力$F$が一定である場合のモデルを用いて運動エネルギーが$\frac{1}{2}mv^2$であることを導出しておく。

始めは静止していた物体に対して一定の力$F$を加えて運動させたとき、物体の運動方程式は

$$ma=F$$ であるから、
$$a=\frac{F}{m}$$
で物体は運動する。

等加速度運動において成立する式
$$v^2-{v_0}^2=2ax$$ において、初めは静止していたので$v_0=0$ として
$$v^2=2ax$$
これに$a$を代入して、
$$v^2=2\frac{F}{m}x$$
$$\frac{1}{2}mv^2=Fx$$

この式は、加えた仕事が$\frac{1}{2}mv^2$に等しいということを示している。
物体に与えた仕事は運動エネルギーへと変わるのであったから、速度$v$を持つ物体の運動エネルギーは$\frac{1}{2}mv^2$となる。



力学的エネルギー

運動エネルギーの他にもエネルギーはその形態によってたくさんの種類が存在するが、力学における重要なエネルギーは特に次の3つである。

①運動エネルギー:$\frac{1}{2}mv^2$

前述の通り、速度$v$を持って運動している物体は運動エネルギーを持つ。

②重力による位置エネルギー:$mgh$
($h$:基準からの高さ[m], $g$:重力加速度[$m/s^2$])

地球上にある物体には常に大きさが$F=mg$である重力がかかるので、より高い位置に持っていくためにはその重力に逆らいながら力を加えなければならない。
その時にした仕事が重力による位置エネルギーとして蓄えられるのである。
重力による位置エネルギーとは何か?と聞かれたときに一番良い回答は、「重力に逆らって物体を移動させるときに必要な仕事」である。

③弾性エネルギー:$\frac{1}{2}kx^2$

ばねなどの弾性を持つ物体には、弾性力によるエネルギー(これも位置エネルギーの一種である)が蓄積される。
ばねは伸縮させると元に戻る方向に復元力がはたらく(フックの法則)
重力による位置エネルギーと同様に、弾性エネルギーとは「復元力に逆らって物体を移動させるときに必要な仕事」である。

そして、この3つの主要なエネルギーをまとめて力学的エネルギーと呼ぶ。