今回は高校物理の基礎である慣性の法則と力のつり合いについて学習する。
その際に、「雨はなぜ人に当たっても痛くないのか」という疑問を題材に、力のつり合いを学習するうえで重要な現象である終端速度について触れる。
この記事では、以下のことを目標とする。
・力のつり合いについて理解する。
・終端速度とその原理について知る。
01慣性の法則
物体は外部から加わる力の合力が0である限り現在の運動を維持しようとする性質を持つ。
この性質のことを慣性の法則という。
ここで、現在の運動を維持するというのは簡単に言えば物体の速度(ベクトル)は変わらないということである。
外部から何かしらの力が加わらない限り、速度を持たず静止している物体はそのまま静止し続けるし、等速で運動している物体はその速度を維持して延々と運動する。
また、外部から力が加わったとしてもそれらの合力が0に等しい場合(釣り合っている場合)、同様に現在の運動を維持しようとする。これについては後述する。
$\vec{F}=\vec{0}$ であるとき、同時に $\vec{a}=\vec{0}$ でもあるため加速度は0で、速度ベクトル $\vec{v}$ は一定となるということである。運動方程式についての詳細な解説はこちら

02力のつり合い
すでに力のつり合いは何度か話に出てきているが、ここで一度改めて説明しておく。
物体に外部から力が加わっているにも関わらず、
2.物体が等速直線運動をしているとき
がある。
この時、物体にかかっている力は釣り合っているという。
例えば、水平面上で静止している物体は鉛直方向に運動していない。
これは重力と水平面から受ける垂直抗力が釣り合っているからである。
垂直抗力というのはその面にかかる力に応じて値が変わるが、ちょうどその値が重力と等しくなっているから鉛直方向には運動していないのである。
これがもしも重力の方が大きいということになってしまうと、水平面を突き破ってでも物体は下に運動しようとするであろう。
重いものを机の上にのせて机が壊れるようなイメージである。
また、次の「雨粒と終端速度」において詳しく後述するが、力が時間的に変化することによって、物体が運動している途中で力が釣り合うという状況も考えられる。
この時ももちろん釣り合った瞬間から次に釣り合わなくなるまでの間、等速度で運動することになる。
03力のつり合いと終端速度
「雨粒が人に当たっても痛くないワケ」と題して、力のつり合いを用いた興味深い現象を見ていく。
雨が降った時、雨粒はかなり高い位置から落ちてきているにも関わらず私たちがぶつかって痛いと感じることもケガをすることもない。
実はこの現象は力のつり合いおよび慣性の法則を用いて説明することができる。
一般に、雨粒は速度に比例した空気抵抗力$bv$を受ける。($b$:比例定数)
始めは速度が小さいため空気抵抗力も小さいが、速度が大きくなるにつれて空気抵抗力は大きくなり、やがて重力と一致する。
するとそこで雨粒にかかっている力が釣り合うため、慣性の法則によりそれ以上加速されることはなく、その時点の速度を保った一定の速度で地上まで落ちてくるようになる。
もしこの物理現象がなければ、雨粒が高さの分だけ無限に加速されてしまい人もケガするようなスピードで地上に到達することになってしまう。
また、このような現象における最終的な速度を終端速度といい、力学上重要な物理量であると同時に問題の題材としても良く用いられる。