高校で物理を学んでいると、授業のスピードが遅く感じられ、受験に間に合うのかどうか心配になる人も少なくないと思います。
そこで、高校物理を独学し始める前に知っておいてほしい情報をまとめました。
・高校物理を履修していないけど勉強してみたい
・受験対策のために物理の全体像を知っておきたい
こういった人はぜひ参考にしてみてください。
目次
物理を学習する前の心意気
まず物理を独学し始める前に、一つ理解しておいてほしいことがあります。
それは、物理の学習は6割の理解で進めていくという事です。
物理の勉強をしていると、「なぜこんなことをしているのかわからない」と思うことがしばしばあります。
しかし、その疑問をすっきりと解消するためにはより難しい先の方の理論を学習しなければならないという事が多いので、その分野だけを100%理解してから先に進むというのは非常に効率が悪いのです。
そこで、教科書や参考書の内容があまり理解できなくても6割理解出来たら先に進む、ということをしてみてください。
そうしてどんどん学習を先に進めていくうちに、分野ごとのつながりや全体像が見え始めます。
特に物理の学習では、その段階でもう一度教科書を読んでみることで驚くほど理解が先に進むという事が多いです。
このようにして全体像から物理を独学してくことで、「何のためにこの分野を学習しているのか」という応用性が理解でき、挫折しにくくなります。
物理学は慣れるまで簡単ではありません。
わからなくてもやっているうちに徐々に理解していくものだと頭に入れておきましょう。
物理を学習する最も効率の良い順番
高校物理は、
・波動
・熱力学
・電磁気学
・原子
の5つの分野からなります。
どの順番で学んでいくかというのは高校によって違うようですが、受験で高得点を取るという目標のもとでは、
力学→電磁気学→波動 or 熱力学→原子
の順番で学んでいくのが良いです。
また、受験を気にしないで独学する場合でも力学は必ず初めに学習しましょう。
その他に順番は気にしなくても大丈夫です。必要に応じて、好きな順番で学習しましょう。
では、なぜこの順番がいいのか根拠を見ていきます。
力学は必ず初めにやる
力学は、物体の運動やエネルギー、力について学習する分野です。
「物理といえば力学!」というほど、物理学の基礎中の基礎になるので、まずは絶対に力学を学習してください。
力学はほかの分野と密接に関わっており、力学でつまずいてしまうと物理の学習効率が全体として悪くなりますし、受験においては必ず出題されるという特徴もあります。
電磁気学はなるべく早めに
電磁気学は、範囲が広い上に理論が難解なので慣れるまで時間がかかります。
しかし受験では力学と並んで必ず出題される物理の最重要分野といっても過言ではありません。
また、特に公立高校の学生は電磁気学を3年の夏以降で教わる人が多いため、受験ぎりぎりになってから「交流習ってなくて点数が取れない!」なんてことになりがちです。
そういった受験の重要性と難易度、授業でのペースが一致していない電磁気学こそ、独学でなるべく早めに手を付けるべきです。
波動、熱力学はお好きな方から
高校物理において、波動と熱力学の分野はほかの分野とあまり関りがありません。
(電磁気学の交流理論では波動の知識がある方が良いですが、力学の単振動の際に使う程度の波の知識で対応できます◎)
力学や電磁気学と比べて範囲もそこまで広くなく、熱力学に至ってはほとんど出題される問題が固定化されてきています。
そういった背景からか、受験においては熱力学か波動のどちらかを選択問題にしている大学が多いです。
自分が受けたい大学がどのような問題形式にしているかをしっかりと調べて、出そうな方を重点的に学んでみるのも作戦のうちです。
原子は最後に短期で完成させる
高校物理の原子分野は実は非常に簡単です。
覚えることも少なく、授業でメインになりがちな物理学史の問題は一切出題されないといってもいいでしょう。
しかし、高校物理の最後で学習する分野であるがために、勉強時間が圧倒的に足りなくなりがちで、結果として「原子物理はわからない」となってしまう生徒が非常に多いです。
実際受験においても原子分野は出題しないと明言している大学も多いですが、自分の志望する大学が原子分野を範囲から外していないならしっかりと学習しましょう。
おススメは短期で一気に学習し、定着させることです。
単元別難易度
では、単元別に独学の難易度をまとめてみます。
力学:難易度★★★☆☆
力学は初めに学ぶ内容であるがゆえに、物理学そのものの考え方に慣れていない状態からスタートすることが多いです。
しかし、先ほども述べたように、6割の理解でどんどん先に進むという事を意識して学習していけばそれほど難解なものではないと気づくでしょう。
何度も触れるうちに自然と覚えていくという感覚で気長に勉強しましょう。
電磁気学:難易度★★★★★
電磁気学は範囲が広いため、独学においてつまずく場所が非常に多いです。
・力学の積極的な3次元への拡張
・コンデンサーにおける電荷の流れがつかみにくい
・暗記でなんとかならない回路理論
・微積分が必須の交流理論
などなど、、、。
こういったところでつまずいてしまう場合は、しっかりと参考書を読んで定義から理解するほか、スタディサプリなどの動画補助教材を用いて独学していくと良いと思います。
理系科目の独学にもってこいの動画教材「スタディサプリ」についての記事はこちらからどうぞ↓

波動:難易度★★☆☆☆
波動分野は特に難しい理論はありません。比較的独学しやすい分野だといえます。
しかし、光の干渉問題を筆頭に、難問を作ろうと思えばいくらでも作れてしまうのが波動分野の恐ろしいところです。
こういった問題に立ち向かうためには、普段から波動を私たちの身の回りの自然現象と結び付けて学習してくことが非常に重要です。
式だけでなく、図を用いた感覚的な理解も大切にしながら学習しましょう。
熱力学:難易度★☆☆☆☆
熱力学という名の力学です。
高校物理において、純粋な熱力学の理論はほとんどないといっていいと思います。
(しっかりとした熱力学の理論を学習しようとすると微積分の考え方が必須になるため。)
そのため、受験問題ではほとんどが力学との融合問題として出題されます。
従って、力学をしっかりと理解していれば問題なく独学可能だと思います。
原子:難易度★☆☆☆☆
先ほども述べた通り、原子物理はしっかりと学習すれば教科書レベル以上の内容はほとんど出題されません。
この分野は将来的に大学で学習する「量子力学」という分野につながるのですが、この量子力学の内容は多くの大学生がつまずく分野であり、内容的にも最先端で研究されている物理学の基礎になっています。
受験において難しい問題を作ろうとすると、こういった大学の内容に踏み込まざるを得ないため、教科書レベルの公式以上の問題は出題されないという背景があります。
何度も言いますが、教科書の内容をしっかりと学習すれば十分ですし、そのための難易度は全く高くありません。
おススメ教材
それでは具体的に独学に向けた物理学のおススメ教材をご紹介します。
是非参考にして下さい。
受験用参考書
1.物理のエッセンス
力学&熱力学、波動&電磁気学&原子の2冊構成です。
解説が非常に丁寧で、受験物理の王道的ポジションをとっています。
私も初めはこのエッセンスから学びましたが、ところどころに物理に対する興味を引き出してくれるようなコラムがあり、それだけでも読む価値があります。
全体として例題数はもう少し多くても良いかなという印象ですが、非常に使いやすかったです。
2.大学入試 漆原晃の 物理基礎・物理が面白いほどわかる本
力学&熱力学、電磁気学、波動&原子の3冊構成です。
講義形式で解説が進んでいくタイプの参考書で、独学に非常に向いています。
授業などでも物理学を学んだことがなく、本当に初めて学ぶ場合もしくは物理が嫌いでなんとか克服したいという場合はエッセンスよりもこちらの方が良いと思います。
学問としての物理学参考書(微積物理)
1.新・物理学入門
微積分を用いた本格的な物理学の入門書です。
高校生でも数学が得意な人であれば理解できるレベルの内容なので、私は初めてこれを高校生の時に読み、感動したのを覚えています。
数式を使って厳密に物理学を独学したい場合にお勧めの一冊です。
2.考える力学
力学のみの参考書ですが、おススメです。
しっかりとした内容でありながら、数学的な補足も多く、微分積分はもちろんのこと微分方程式や極表示に慣れていない人でもゼロから学習することができます。
まとめ
物理の独学は確かに難しいです。
しかし根気強く学習していけばある日ぱっと視界が開ける時がきます。
また、電磁気学をはじめとして、独学に詰まってしまった時などは書籍に頼りすぎずに動画教材などを積極的に活用していきましょう。
それでは、物理学を独学する人の参考になればうれしいです。