【図解】力の性質とベクトルについて理解を深めたい人へ【物理基礎】

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物理

今回は力学を学ぶ上で欠かすことのできない、力について学習する。
この記事では、次のことを目標とする。

・力の種類を知る
・力を表現する方法を知る
・力とベクトル量を理解する
・力を適切に合成、分解できる

 

00力の種類

物質にはたらく力は、その性質によっていくつかの名前がついている。
しかし、元をたどればすべての力は4つの種類に分けられる。(基本相互作用や自然の力と呼ばれる。)

1. 重力
2. 電磁気力
3. 弱い相互作用
4. 強い相互作用

この4つの力(主に関係するのは重力と電磁気力)から、私たちが普段目にするような摩擦力、浮力、張力、空気抵抗力、弾性力などが生じている。
というのも、例えば摩擦力は物質を構成ししている分子同士の引力(ファンデルワールス力)に起因するものであり、分子間力は電磁気力そのものである。

 

弱い相互作用、強い相互作用というのは原子核や電子といった素粒子に関する力である。
実は原子核の構成やβ崩壊という現象に携わる力がどのようなものなのかという疑問に対しては重力や電磁気力だけでは説明がつかない。従って、これらを説明できる力として強い力、弱い力というものが存在していると考えられている。

古典物理学の範囲では主に重力および電磁気力を基本の力として扱う。

 

・力は4つの基本的相互作用からなる。
・力学で主に重要なものは重力と電磁気力である。

 

01力の表現方法

力は大きさだけでなく、向きの情報を持っている。
つまりベクトル量である。

ベクトルを表現するのには矢印を使う。
力がどこから働いているか(作用点という)をしっかり明記したうえで、正しい方向に矢印を描くことで力を表現する。

 

一般的に矢印の長さは「力の大きさ」を示す。
しかし、物理の問題においては実際の数値ではなくより一般化された文字を扱うことが多いため力の大きさはわからないことがほとんどである。
従って、実際に問題を解く際には大きさは気にせず、どの物体にどの向きで力がかかっているのかを重要視して力を描けばよい。

例えば、重力は次の図のように物体の中心から鉛直方向下向きにはたらく。
ここで、重力は重力加速度と呼ばれる定数g (約9.8$m/s^2$)を用いて、質量×gで求めることができる。

垂直抗力は接する面から垂直にはたらく。

摩擦力は物体が動こうとする方向と逆向きにはたらく。

ばねなどの弾性力は自然長の位置に戻ろうとする向きにはたらく。
※自然長の位置:なにも力が加わっていない状態のばねの長さと位置のこと。

主にこれらの力と、次に解説する作用反作用の法則を組み合わせることによって、問題に対応するような力を適切に描くことができる。

・力はベクトル量であり、矢印を用いて表現される。
・問題を解くうえで力の向きは非常に重要である。

 



02作用反作用の法則

力には必ず作用反作用の法則が成り立つ。
これはつまり、ある力に対しては大きさが同じで逆向きの力が一直線上に必ず存在するということである。

さて、ここでは実際の問題の例として斜面に2つの物体がある場合の力を図示する。
このような2つ以上の物体について力を図示する場合、2つの物体を分けて別々に矢印を書くとどちらの力かわかりやすい。

ここでの思考は次の通りである。

1.重力は必ずはたらく。
2.接する面があれば垂直抗力がはたらく。
3.「なぜ物体は滑り落ちないのか?」と考え、摩擦力がはたらくことに気づく。
4.作用反作用の法則を意識して書く。

このように、摩擦力などは私たちが持つ力学的な感覚を頼りにするとスムーズに書くことができる。

 

重力の反作用は?
自然の力には必ず作用反作用の法則が成立する。もちろん重力も例外ではない。
重力は物体の中心から地球の中心に向かって引き付けられるようにはたらく。
この力の反作用はその逆で、地球そのものが物体に引き付けられるような向きにかかっている。

決して重力と垂直抗力が作用反作用であると考えてはならない。
重力には反作用が存在するし、垂直抗力にも逆向きに地球を押し返すような反作用が存在している。
このような誤解は、後に学習する「力のつり合い」と「作用反作用の法則」を混同した典型的なミスだといえる。

 

・力にはそれに対応する逆向きの力が必ず存在する。(作用反作用の法則)
・作用反作用の法則と力のつり合いを混同しないように注意する。

 

03力の合成と分解

力はベクトル量であるので、ベクトルとしての足し算、引き算が可能である。(ベクトルにかけ算や割り算は存在しない。)

すなわち、矢印をたどるように作図すれば任意の2つの力を合成および分解することが可能である。

特に力学の問題を解くという観点においては、力は合成するよりも分解する方が多い。
その際に分解した力の大きさを求められないと全く意味がないので、たいていは問題に設定されている角度などを使い、三角関数を設定することによって分解後の力の大きさを算出する。

 

分解できるのは力だけではない!
力はベクトル量であるから方向に応じた合成や分解が可能である。
言い換えれば、ベクトル量であればどんな物理量でも分解できるということだ。力だけでなく加速度や速度、そして運動量などもベクトルであるから、これらももちろん分解できる。
力を分解しても問題の解決が難解になるような設定であれば、力はそのままにしておいて他の物理量を合成、分解するという方法をとるといった柔軟な対応が求められる。

 

・力は問題に応じて適切な方向に分解する。
・分解後の力は三角関数を用いて求める。
・力だけでなく、他のベクトル量も分解可能である。
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