自由落下,投げ上げ,放物運動などの等加速度運動をすべて解説します!【高校物理】

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物理


この記事では等加速度直線運動とその公式、および様々な等加速度運動について1から基礎的な内容をすべて網羅できるように徹底的に学習する。
等加速度運動は、物理を学習し始めた頃に挫折する一つの要因である。というのも、自由落下運動、投げ上げ運動、放物運動など運動の種類が多く、一見すると複雑怪奇に見えることや、ベクトル量の扱いに慣れていないため、符号を間違えてしまうからである。

また、この分野は公式を覚えていない、もしくは現象を理解せずに公式だけ覚えていることが比較的多い。

問題を解くためにはまずは公式を暗記することも大切だが、それ以上に等加速度運動に関するイメージを持ったうえで、グラフや現象の理解に努めなければならないことに注意しながら学習する必要がある。

途中では「物理の公式は覚えるべきか」という話もしているので是非一読してほしい。

物理解説まとめはこちら↓

ゼロから物理ー高校物理解説まとめ
「ゼロから物理」と題してAtonBlog内の物理解説のページをまとめています。 2021年末までには高校物理範囲を完成させる予定です。 まだまだ鋭意更新中!

00等加速度直線運動について

物体が運動している方向と同じ方向に一定の加速度を持つ場合、その物体は速度のみがだんだんと変化するような運動をする。
このような運動を等加速度直線運動という。

等加速度であるから、一定の割合で速度が変化していく。
すなわち徐々に速度が大きくなる運動か、速度が小さくなって負になる運動の2つのパターンしかありえない。

01等加速度直線運動の公式

速度と時間の関係式

$t=0$において初速度$v_0$で運動している物体が、加速度$a$(一定)で運動する場合、ある時間$t$における速度$v$を求める。
加速の定義式から

$$a=\frac{\Delta v}{\Delta t}$$
$$a=\frac{v-v_0}{t-0}$$
この式を$v$について解くことで

$$v=v_0+at$$

となる。
これにより、等加速度直線運動における任意の時間での速度が計算によって求められる。

この式のグラフは次のようになっている。($v-t$グラフ)
そして、$v-t$グラフの面積は変位を表しているのであった。

速度と時間の関係式:$v=v_0+at$

位置と時間の関係式

先ほどと同じ条件で、物体は初めに$x_0$にいたとしてある時間$t$における位置$x$を求める。
先ほど求めた速度と時間の関係式$v=v_0+at$をグラフに表示すると、これは線形である。
物体の変位$\Delta x$は$v-t$グラフの面積で表されるのであったから、図のように計算することで

$$\Delta x=v_0t+\frac{1}{2}at^2$$
$$x-x_0=v_0t+\frac{1}{2}at^2$$
$$x=x_0+v_0t+\frac{1}{2}at^2$$

となる。

位置と時間の関係式:$x=x_0+v_0t+\frac{1}{2}at^2$

位置と速度の関係式

ある時刻$t$における位置$x$がわかっていて、その時の速度$v$が知りたい。
もしくは逆に速度がわかっていて位置が知りたい、なんてことは日常茶飯事である。

次の画像を見てほしい。

このように、3つの変数について2つの式がある場合、残るもう一つの関係式も知りたくなるのは当然のことであろう。
また、その関係式が今までの2つの関係式から不必要な文字(今回であれば時刻$t$)を消去した結果であることも想像つくであろう。

今まで学んだ2つの関係式
$$v=v_0+at$$
$$x=x_0+v_0t+\frac{1}{2}at^2$$
これらの式から$t$を消去すると、
$$v^2-{v_0}^2=2a(x-x_0)$$

となる。
問題の多くは$x_0=0$(初期位置がx=0ということ)と設定されていることが多いため、次の式で学習した人も多いと思う。
$$ v^2-{v_0}^2=2ax$$
これに関してはどちらの式を覚えても良い。

位置と速度の関係式:$ v^2-{v_0}^2=2ax $

 

公式は暗記するべきか?

物理において、公式は暗記すべきかどうかということがよく質問される。
誤解を恐れずに答えれば、「基本的には暗記すべき」である。

数学の一部の公式などは、その必要性の低さや暗記の煩雑さから「導出できれば覚えなくても良い」といわれることが多い。
しかし、特に高校物理の公式と呼ばれるものの多くはある簡単なモデルを設定し、それについて与えられた初期条件と適切な定義式や方程式を用いて導出されるものである。
しかもその多くは高校生が理解できるようにかみ砕かれたあいまいな議論である。

正直そのような導出過程をわざわざ暗記するのであれば、厳密に正しい微分方程式を立てて解くという本来の物理学の問題の解き方を学んだ方がよっぽど良い。

つまり、受験などの「制限時間内に問題を解いて正解する必要がある」という場合は、必然的に次の2択になるのである。

①基礎方程式から適切な微分方程式を立て、地道に計算する。
②公式を適切に用いて、計算する。

ここに
③公式を導出する。
なんて無駄な選択肢を置いていないのが答えである。

02応用1:自由落下運動

等加速度運動の非常にシンプルな例の一つは自由落下運動である。
地球上に存在する物体には常に鉛直下向きの重力加速度$g$を持ち、これによって物体は常に地面に向かって落下する。($g$は約9.8 $m/s^2$の定数)

落下中に一切の力を加えることなく自然に任せた落下運動を特に自由落下という。

自由落下運動は一定の加速度$g$による下向きの運動であるから、等加速度運動の公式が理解できていれば軸の方向が変わるだけで全く等しい運動である。

軸の向きには注意する必要がある。
鉛直下向きに軸を取った場合、運動方向と軸の向きが等しく、今まで通りの運動である。
①$v=v_0+gt$
②$y=v_0t+\frac{1}{2}gt^2$(開始点を$y=0$とした)
③$v^2-{v_0}^2=2gy$

ただし、軸の向きを鉛直上向きに取った場合、重力加速度は下向きに大きさ$g$であるから、これを$-g$と表現する必要がある。
つまり、
①$v=v_0-gt$
②$y=v_0t-\frac{1}{2}gt^2$
③$v^2-{v_0}^2=-2gy$

となる。(符号に注意)

練習問題

地面からの高さが$h$である地点から$t$=0において鉛直下向きに初速度$v_0$を与えて自由落下させたとき、地面に到着する時刻$t$を求めよ。(★★☆☆☆)

03応用2:投げ上げ運動

物体を上向きに投げ上げる運動を考える。この運動は自由落下運動よりも少し厄介である。
物体はある点まで速度を持って上昇し、その後下に向かって落ちてくるということは簡単に想像がつく。

つまり、以下の2つの運動に分けて考えると簡単である。

①投げ上げてから最高点に到達するまでの運動
②最高点から自由落下する運動

また、最高点では必ず速度が0になるということに注意。

①投げ上げてから最高点に到達するまでの運動

まずは軸を上下どちら向きに取るかを考えよう。もちろんどちら向きにとっても最終的な解答は変わらない。(多少変わったとしてもどちらも正解である)

投げ上げる、ということは上向きに初速度を持つということである。
つまり、軸を上向きに取ればその初速度が$+v_0$になり、重力加速度は$-g$として取り扱うことになる。

軸を下向きに取れば、初速度は軸と反対であるから$-v_0$になり、重力加速度は$+g$として取り扱えばよい。

このように、加速度運動に限らず、物理の問題を解くときには常に軸の取り方に注意を払わなければならない。

ここでは上向きに軸を取って考えるとする。
上向きに軸を取った時、$+v_0$, $-g$として等加速度運動を考えれば良いから、使う式はそれぞれ
①$v=v_0-gt$
②$y=v_0t-\frac{1}{2}gt^2$
③$v^2-{v_0}^2=-2gy$
でよい。

また、最高点に到達したときは$v=0$であるから、③の式から、最高点の座標は
$$0-{v_0}^2=-2gy_{max}$$
$$y_{max}=\frac{{v_0}^2}{2g}$$
と求めることができる。

$v_0$, $-g$の条件で投げ上げたときの最高点は$\frac{{v_0}^2}{2g}$

②最高点からの自由落下

最高点が$y_{max}=\frac{{v_0}^2}{2g}$で表されることが分かったため、ここを$y_0$とし、$-g$によって自由落下する運動を考えれば良い。(スタート地点が0ではないことに注意する)

①$v=v_0-gt$
②$y=y_{max}+v_0t-\frac{1}{2}gt^2$
③$v^2-{v_0}^2=-2g(y-y_{max})$

鉛直投げ上げ運動に関しては以上である。

練習問題

地面からの高さが$h$である地点から、$t$=0において鉛直上向きに初速度$v_0$を与えて物体を投げ上げた。この時、物体が地面(y=0)に到着する時刻$t$を求めよ。(★★★☆☆)

04応用3:放物運動

放物運動とは、角度をつけて物体を投げたときに物体が描く運動である。
加速度運動の基礎的な題材としてはなかなか複雑であり、集大成といえる。

放物運動は一見複雑そうな運動に見える。これは今まで一直線上の運動のみを扱ってきたのに対し、この放物運動は2次元的な平面上を運動するからである。
しかし、実はこの運動も直線状の運動に分解することができ、これが問題を解く際のカギになる。

①放物運動は水平と鉛直に分解して考える。

具体的には、水平方向(x方向)と鉛直方向(y方向)に分解して考える。
すると実は水平方向には一切加速度がないため、水平方向の初速度のまま等速直線運動をする。
また鉛直方向には重力加速度が下向きにかかっているため、先ほど学習した投げ上げ運動をすることになる。

従って、物体を放り投げる際の初速度をそれぞれの方向に分解すれば、あとはx, yそれぞれの方向について別々に考えても良いということになる。

x方向:等速直線運動
y方向:投げ上げ運動
【重要】方向成分に分解したらそれぞれ別々に考えてよい

②水平方向の運動:等速直線運動

大きさが$v_0$の初速度を水平面からの角度$\theta$で与えたとする。
この時水平方向の初速度は、速度ベクトルを分解することによって、$v_0\cos\theta$となる。

ベクトルの分解に関して不安がある人はこちらを参照。

【図解】力の性質とベクトルについて理解を深めたい人へ【物理基礎】
力とは?力の性質や合成、分解について詳細に解説しました。 物理基礎を学び始めた人にとって障害となりやすいベクトルの合成ですが、ポイントを押さえればとても簡単です。 実践を見据えた細かいコンテンツで物理の勉強をサポートします。

これ以降速度は変化しないので、ずっと$v=v_0\cos\theta$の等速直線運動をすることになる。
従って、x座標と時間の関係は
$$x=(v_0\cos\theta)t$$
となる。

③鉛直方向の運動:投げ上げ運動

鉛直方向の初速度は$v_0\sf{sin}\theta$であるから、この初速度で投げ上げ運動を考えれば良い。
先ほど考えたように投げ上げ運動を計算すれば、

①$y_{max}=\frac{v_0\sin\theta}{2g}$
②$v= v_0\sin\theta -gt$
③$y=y_{max}+ (v_0\sin\theta)t-\frac{1}{2}gt^2$
④$v^2-(v_0\sin\theta)^2=-2g(y-y_{max})$

となる。

④補足:放物線の式を導出する

放物運動を考える際には、x方向とy方向に分解して考えた。
そうして得られたのは、もちろんx方向とy方向に分解された結果である。

これらを一つにまとめることによって、放物運動の軌跡がどのような数式で表現できるかを知ることができる。
(※実際には分解された式によって様々なことがわかるため、それで十分なことが多くここまでする必要性はあまりない。問題によっては問われる場合もあるといった程度である。)

知りたいのは放物線の軌跡の式、つまりx座標とy座標に関係することであるから、それぞれの座標を示す以下の2式から不必要な文字$t$を消去してやればよい。

①$x=(v_0\cos\theta)t$
②$y=y_{max}+ (v_0\sin\theta)t-\frac{1}{2}gt^2$

①式より
$$t= \frac{x}{v_0\cos\theta}$$
であるから、これを②式に代入して、
$$y=y_{max}+(v_0\sin\theta)( \frac{x}{v_0\cos\theta})-\frac{1}{2}g(\frac{x}{v_0\cos\theta})2$$
$$y=y_{max}+\frac{\sin\theta}{\cos\theta}x-\frac{g}{2(v_0\cos\theta)^2}x^2$$

これに$y_{max}=\frac{v_0\sin\theta}{2g}$を代入すれば、
$$y=\frac{v_0\sin\theta}{2g}+(\tan\theta) x-\frac{g}{2(v_0\cos\theta)^2}x^2$$
を得る。
これが物体を初速度$v_0$で放り投げたときの放物線の軌跡の式であり、実際にxについての二次関数(放物線)になっていることがわかる

練習問題

水平面からの角度が$\theta$となるように初速度$v_0$で物体を投射した。
この物体が地面についたとき、物体を投げた地点からの距離を求めよ。(★★★☆☆)